ノドの病気

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こんな喉のお悩みはありませんか?

  • のどが痛い・ヒリヒリする(飲み込んだときだけ?・それ以外も?)
  • 声がかすれる・出にくい
  • せきやたんが続く
  • のどに違和感や異物感がある
  • 飲み込みにくい・むせやすい
  • のどが乾燥する
  • いびきがひどい・寝ていると息が止まる
  • のどの腫れやしこりが気になる

など

感冒などに伴う一時的な症状でしょうか、それともなぜか続いている症状でしょうか。長らく専門にしてきている領域です。このような症状がある場合は、山口市の「おおうち耳鼻咽喉科」までご相談ください。

ノドの痛みが続く

ノドの痛みが続く

ヒリヒリする、飲み込むと痛いといった症状は、風邪や感染症が原因となることが多いです。その場合は感冒が治るとともに徐々に改善していくもののはずです。もちろん、お薬などでできるだけ早く病気が軽快することを目指せます。一方で、症状が長引く場合は、そのほかの要因が考えられますので、早めの受診をおすすめします。まあ飲み食いするとき以外は大丈夫だから、とか熱があるわけでもないから、などで様子を見るのはあまりお勧めできません。痛みは何かしら原因がないと生じないはずですので、ご相談いただければと思います。

考えられる病気

咽頭炎

ノドの炎症が急性で発生し、痛みを引き起こすことがある。急性咽頭炎は過去に扁桃摘出を受けられていても発生しうる病気です。中でも、上咽頭炎は実に多彩な症状を呈することがあります。鼻詰まり感や頭痛、全身倦怠感、肩こりまで様々です。近年問題になっているのがCOVID19罹患後の後遺障害(Long COVID)です。ある報告ではコロナ感染者の2割程度にこのLong COVIDが生じるとも言われます。当院では塩化亜鉛を用いる上咽頭擦過療法(EAT)ができるよう予定しています。当院で用いる鼻咽腔ファイバーはOLYMPUS社製の非常に解像度が高い内視鏡です。これを用いながら処置を行います。

扁桃炎

扁桃腺が炎症を起こし、喉に痛みを伴うことがある。ここでいう扁桃腺とは、口蓋扁桃(こうがいへんとう)を指します。扁桃組織にはこの口蓋扁桃のほかに咽頭扁桃(アデノイド)、舌扁桃、耳管扁桃、咽頭側索、濾胞リンパ節群があります。その中で最も大きいのが口蓋扁桃です。言うまでもなく口は外界からの入り口であり、雑菌やウイルスが入り込む場所です。たくさんある扁桃組織は門番として、口を広げた時に異物を絡め取れるように配置されています。これを特にワルダイエル咽頭輪と呼称しています。門番グループのリーダー的存在が口蓋扁桃です。口蓋扁桃は通常10歳頃をピークに大人になるにつれて相対的にサイズが小さくなりつつ、また縮小もしていきますが、時折これが大きいまま大人になる例があります(扁桃肥大)。扁桃腺が大きいままの方は縮小した場合よりも炎症を起こしやすい、イビキの原因になり寝ている時の開口もしやすい、など、扁桃炎を起こしやすいと言えます。痛みを伴う急性扁桃炎を何度も繰り返すと、急に勤め先や学校を休むことにも繋がるため、社会的にも問題になります。扁桃摘出術をお勧めするケースもあります。また、大きくなくても何度も炎症を繰り返す場合も同様です。

特殊な例として、「扁桃炎を起こしているとき血尿・蛋白尿が生じる」「扁桃炎の時に手のひらや足の裏の皮膚が湿疹を起こす」など、全く関係ない部位に異常が起こることがあります。
これは病巣扁桃感染症と言い、Ig A腎症や掌蹠膿疱症、尋常性乾癬などが代表です。こういったケースでは総合病院へ紹介させていただき、適切な治療を受けていただきます。

溶連菌感染症

溶連菌による感染症で、喉の激しい痛みとともに発熱を伴うことがある。お子さんにも生じうる溶連菌感染で、代表的な症状として咽頭痛が挙げられます。高熱と強い咽頭痛、そして舌の変化、四肢や体幹部の湿疹など症状が多彩です。溶連菌は感染力も強いため、家族内での感染も問題になります。早めの受診をお願いいたします。

咽頭腫瘍、口腔腫瘍

舌癌に代表される口腔がんや、扁桃ガンなどの中咽頭癌、さらに奥の下咽頭癌でも咽頭痛は生じます。これらの恐ろしいところは、腫瘍が小さいうちはそこまで症状が出ない点です。そして、少し痛い程度だと「口内炎が治らないな」という考えが生じるため、受診が遅くなりがちです。この「口内炎が・・・」と言う理由は本当に多くの患者さんから耳にしました。先ほど、『痛いには必ず理由がある』旨の記載をしましたが、最も見逃してはならないのが悪性腫瘍です。痛みの原因が炎症であれば、自然治癒は十分期待できます。しかし悪性腫瘍は必ず悪くなり続けていきます。「タバコ吸わないから大丈夫」「お酒飲めないからノドのがんにはならないだろう」と言うお話を聞くことがありますが、実際にはどちらものまない方であっても癌は発生します。年齢的にも20代若年者であっても起こり得ます。ちなみに、電子タバコは紙巻きタバコに比べて害がないと言うのも否定されています。「電子に変えたからもう大丈夫」は全く当てはまりませんのでご留意ください。

腫瘍に関してはこの後様々な症状の項目で頻回に出現すると思います。気になる方は早めにご相談ください。

声がかすれる・出にくい

声がかすれる・出にくい

声がかすれたり、声が出しにくくなる症状は、のどの炎症や声帯の異常が原因で起こることがあります。ノドの中でも喉頭(こうとう)が該当します。歌をうたわれる方、教員、屋外での作業が中心の方など、職業病とも言える病態のことが多いです。仕事があるからと無理に声を出し続けると悪化するため、早めの対応が大切です。また、声の使いすぎで悪くなったと思っていたら喉頭がんだったと言うケースもあります。以前と比べておかしいな、しかも長く続いていて治らないな、と感じた場合は早めに「おおうち耳鼻咽喉科」にご相談ください。

考えられる病気

喉頭炎

喉頭(声帯やその周辺)の炎症が声に影響を与えることがある。いわゆる喉風邪の時、咳のし過ぎで声帯が荒れてしまうなどで生じます。近年ではCOVID19感染により声帯及び声門上部、もしくは声門下が強く腫れてしまうケースが見られます。喉頭炎の恐ろしいところは悪化すると気道狭窄(息をするところが狭くなる)で窒息してしまう可能性があることです。風邪をひいてから咳がひどい場合は注意が必要です。息が苦しいと感じたらすぐに119番しましょう。

実際に、喉頭炎の中でも急性喉頭蓋炎という疾患は年間に何名も命を奪われている病態です。夕方救急外来に行って口の中だけ見てもらって薬が出たけど夜中に呼吸が苦しくなってしまうなどもあり、しかも年齢を問いません。本当に恐ろしい病気であり、耳鼻咽喉科医以外は正確には見抜きにくいかもしれません。レントゲンやCTではなく、耳鼻咽喉科医のファイバー検査が必要です。何度も言いますが、息苦しいのを明日まで待とうは絶対にやめてください。

声帯ポリープ

声帯にできたポリープが、声のかすれや出にくさを引き起こすことがある。声帯ポリープは平たく言うと「音声酷使によって生じた血マメ」です。バットの素振りをしすぎると指の付け根にマメができ、時に内出血して血マメになってしまいます。声を出しすぎる(大声・長時間など)と声帯が酷使されます。声は左右の声帯粘膜が擦れあって原音(げんおん)と言うものを作ることで生成されていますので、声の酷使=声帯の擦れ合いが強い、となります。歌手や先生など日常的に声をたくさん出す方(ボイスユーザーと呼びます)に多いですが、そうではない方でも普段出さないような声を出した時にできることがあります。

軽度の声帯ポリープはなるべく声を出さないで過ごす(声の衛生と言います)ことで軽快する場合もありますが、社会生活を送る上で声を出さないと言うのは、実はとても難しいことだと実感すると思います。保存的加療でポリープが縮小しない場合は手術に至る例もあります。

ポリープ様声帯

声帯ポリープに似ている病名ですが異なる病態です。声帯ポリープが左右どちらかの声帯の一部に生じた血マメならば、このポリープ様声帯は声帯全体が左右ともブヨブヨに膨れ上がったむくみです。原因は声の酷使ではなく、喫煙が大半を占めます。他にも逆流性食道炎や飲酒などが挙げられます。いわゆる「酒灼けの声」になります。処方や発声指導もしますが、禁煙できない場合はほぼ治りません。ときに手術加療となるケースもあります。また、ポリープ様声帯の患者さんは会話していても相手に聞き返されることが増えるため、声を酷使することが増えます。その結果、ポリープ様声帯の上に声帯ポリープができてしまうこともあります(polyp on polypoidの状態)。そして手術を受けられたとしても、生活習慣が変わらなければ再発してしまいます。われわれ「おおうち耳鼻咽喉科」をかかりつけにしていただき、より良い習慣を保てるようにしていきましょう。お手伝いいたします。

喉頭癌

声が出にくいという症状の中で最も嫌な疾患だと思います。しかし、数ある悪性腫瘍の中でも最も気づきやすいのが喉頭癌です。正確には声門上癌、声門癌、声門下癌があり、早期発見しやすいのは声門癌です。わずか数ミリの段階でも声が大きく変わるから気付けますし、他人からも指摘されます。声門癌であれば早期発見した場合、内視鏡手術や放射線治療などで完治も十分見込めます。一方声門上や声門下に生じた癌の場合、発見が遅れやすいこともあって進行した状態で見つかるケースも少なからずあります。これらの場合は声がおかしくなっている時点である程度進行していることを意味しますので、内視鏡手術では取りきれないこともままあります。放射線治療と抗がん剤点滴治療の組み合わせ、あるいは声帯ごと喉仏を摘出する「喉頭全摘出術」を行うこともあります。さらに、手術の結果次第ではその後追加で放射線治療を要する場合もあります。

当たり前のことですが、悪性腫瘍は早期発見が望ましいです。声の異常を感じた際は絶対に放置することなく、できるだけ早くご相談ください。当院の軟性ファイバーは非常に画質の良いものを完備しています。治療を受けられた後のフォローアップも承ります。

そして、喉頭癌の原因も大半は喫煙と飲酒です。百害あって一利なし、は本当に正しい表現だと思います。また、酒も百薬の長ではないです。おおうち耳鼻咽喉科に通院していただき、これらから離れられるようにがんばりましょう。この手の治療薬は取り扱っていませんが、診察を通じてお手伝いいたします。

せきやたんが続く

せきやたんが続く

長引くせきやたんは、感染症だけでなくアレルギーや胃酸の逆流あるいは慢性副鼻腔炎が関係していることもあります。症状が続く場合は適切な診断が必要です。耳鼻咽喉科と呼吸器内科の間では「one airway one disease」というように、鼻から始まる気道は肺までも大きく関連していて、逆もまた然りであると考えることが定石となっています。山口県ではこの両科合同での研究会も定期開催されています。すなわち、成人してからの喘息が副鼻腔炎と深い関連があることなどがわかっているのです。風邪も引いていないのにずっと咳が出るな、とか若い頃はなかったのに痰が増えたな、などがあればご相談ください。そして、この咳という症状も実は腫瘍が原因である場合がございますので、そういう意味でも注意が必要です。

よく誤解されますが、痰は全部が喉で作られているわけではありません。むしろ肺で生成された、捨てるべきゴミが気道の粘液とともに一塊になったものが痰であり、喉はそれを勢いよく排出するための中継地点のようなものです。喉頭の炎症などで痰ができることもありますが、実際にはair way全体の問題であることがほとんどです。

考えられる病気

気管支炎

気管支が炎症を起こし、長引く咳を引き起こすことがある。慢性気管支炎など、内科の疾患ではあるものの、上記に示した通りその原因あるいは複合しているのが副鼻腔炎であるケースが最近増えています。当院ではCTなどを用いて副鼻腔炎がないかどうかを確認し、その咳の原因として肺を調べるべきかどうかを判断します。

咽頭アレルギー

アレルギー反応が原因で、喉に異常を感じ、咳や痰が続くことがある。アレルギーというと鼻や眼、あるいは皮膚に生じる反応を連想すると思います。実はノドにもアレルギーが生じることがあり、ノドが痒くなるなどの症状とともに咳が出る例があります。抗ヒスタミン剤などを服用していただくことと、重要なのは「何が原因でその症状が出るのか」と、自分を知ることです。もう一度同じアレルゲンに接したら次は一気に浮腫が生じるかもしれないし、あるいはショック症状が出る可能性もあります。アレルギー反応はその時の体調にも大きく左右されますので、嫌な反応が出るものは基本的には避けるべきです。

逆流性食道炎

胃酸が食道に逆流することで、喉に違和感や咳、痰が生じることがある。胃酸逆流症のことをGERD(ガード)と呼びますが、これが喉頭にまで影響を及ぼし、咳や痰を慢性的に引き起こしてしまうことを咽喉頭酸逆流症LPRD(laryngopharyngeal reflux disease)と呼称します。これが原因でポリープ様声帯に至るケースもあり、放置すべきではありません。「ストレスで胃が悪くて。。。」と話される人で実はLPRDがあり、適切な治療を受けることで胃部の不快感や咳が治る可能性があります。健診で胃カメラを受けられた際、GERDと診断された方はおおうち耳鼻咽喉科で喉頭も確認させてください。何か所見があるかも知れません。

喉頭腫瘍、喉頭癌

上記説明ありますが、やけに長引く咳がある時は喉頭腫瘍の可能性も否定できません。特に、声門下癌の場合は咳や異物感だけで声が変化していない例もあります。その場合は疾患のサインは出ているのに声が悪くないからと見過ごされやすいパターンです。

やはり咳が出続けるのは通常ではありえないことですので、一度診せていただきたいです。

ノドに違和感や異物感がある

のどに何か詰まったような感じがする、違和感が続くといった症状には、さまざまな原因が考えられます。場合によっては重大な疾患が隠れていることもあります。

考えられる病気

咽喉頭異常感症

ノドに異物感を感じるが、実際には異常が見当たらない場合もある。実際にはこれが最も多いと言えますが、複数の医療機関を受診する原因になりがちなのが異常感症です。患者さん本人としては困っている、どうにかしたいと思い受診されますが、カメラなどをしても異常はないと言われてしまう。何か見落とされていては困るため別の耳鼻科を受診するも、同様の確認をされてやはり異常がないと言われてしまう。この中には咽喉頭のアレルギーや、CT、MRIといった画像検査をしないとわからない疾患が隠れている場合、そして本当に何も疾患がない場合ももちろんあります。十分納得するためには画像診断を受けることが一つ重要かも知れません。

おおうち耳鼻咽喉科では頸部までのCT撮影が可能です。全員に行うわけではありませんが、必要の際は画像検査も検討します。ご相談ください。

甲状腺腫瘍

甲状腺に腫瘍ができると、ノドに違和感やしこりを感じることがある。甲状腺とは、気管の前面に付着しているホルモンを作る臓器です。すぐそばには食道もあるため、甲状腺に腫瘍ができると気管や食道を圧迫することがあり、これがノドの違和感・異物感として感じる場合があります。甲状腺腫瘍の大半は良性ですが、悪性腫瘍ができることもあります。そしてノドの違和感という症状だけでは両悪の見分けはつきません。おおうち耳鼻咽喉科では優れた画質の頸部超音波検査(エコー検査)が可能です。甲状腺をみるにはエコーが最も優れていると思います。定期検診としても受けていただきたい検査です。

咽喉頭がん

咽頭や喉頭にがんが発生すると、異物感や違和感が長引くことがある。これまで何度も記載していますが、痛みや咳などではなくただの違和感と感じていたものが実は癌だったという例は何度も経験しています。特に、中咽頭癌のp16陽性例では大きくなっても痛みが出ないことがあり、患者さんは違和感としてしか認識していないことがあります。風邪もひいいていないのにノドがおかしい、食事のたびにゴロゴロした感じがあるなど、何かおかしいと感じたらご相談ください。

喉頭蓋嚢胞、咽頭・喉頭乳頭腫

薬の錠剤のような、ビー玉のようなコロコロしたものがいつもノドにある感じがする場合、喉頭蓋嚢胞(こうとうがいのうほう)や喉頭乳頭腫といった良性疾患があるかもしれません。

どちらもたちまちに害はありませんが、長期間置いておくと不具合が生じる可能性があります。

たとえば喉頭蓋嚢胞は感染を起こすと急性喉頭蓋炎を生じて急激に窒息のリスクが跳ね上がることがあります。また、咽頭や喉頭に発生した乳頭腫はガン化する可能性がゼロではありませんし、播種(はしゅ)といってノド全体にとびひすることもあります。これらはファイバー検査で比較的容易に発見しやすいので、ノドの違和感がある場合はご相談ください。

飲み込みにくい・むせやすい(嚥下障害)

食事の際に飲み込みにくい、むせやすいと感じる場合、のどの機能低下や神経の異常が関係していることがあります。あるいは、咽頭や喉頭に生じた腫瘍のせいで嚥下障害に至っていることもあります。どの様な原因であれ、誤嚥性肺炎の主たる原因となりますので、早めの診察が必要です。誤嚥性肺炎は高齢化社会において死因の上位に位置しています。決して他人事ではありません。そして、人間である以上は生きていく上で栄養を摂ることは絶対必要です。口からものを食べることこそ人たる姿である、と考える方も多いですが、誤嚥が生じるとそれができなくなります。耳鼻咽喉科におけるアンチエイジングの中でも最近特に取り沙汰されているのがこの嚥下障害です。すなわち、まだ戻れる状態(フレイルと言います)でいかに治療する、あるいはリハビリ開始できるか、が重要です。

おおうち耳鼻咽喉科ではファイバー検査の際に嚥下機能検査(V Eと言います)も可能です。リハビリには言語聴覚士(S T)の力が必要不可欠であるため、当院では通院リハビリはできませんが、必要の際は然るべき医療機関へ紹介いたします。

考えられる病気

嚥下障害

食物を飲み込む際に、喉や食道の機能がうまく働かないことがある。加齢による変化が考えられますが、その内訳として「筋力の低下」なのか「呼吸機能の低下」なのか、「神経の障害」なのか「脳=中枢の障害」なのか。あるいは「腫瘍などの物理的な障壁のせい」なのか、「癌の治療後の後遺症」なのか。嚥下障害に至る原因は本当に多彩であり、かついくつかが複合することもしばしばです。たとえば、咽頭癌の放射線治療を2ヶ月に渡り受けてその間に体重も減り筋力も落ちてしまって身も心も疲弊した、という場合、治療前の食生活にすぐ戻れることはほぼありません。また、誤嚥して肺炎になったせいで食事もストップし、痩せてしまい飲み込む力も落ちてしまった、というケースでも同様です。

誤嚥の原因が治療可能である場合はその治療タイミングを逃さないこと、原因の治療ではなくリハビリが適応になる場合はフレイル状態で開始して、できるだけ元に戻れるようにリハビリすることが肝要です。
腫瘍による嚥下障害が原因の場合は言わずもがな、です。

クリニックに受診できる方は大半がフレイルに至る前〜フレイルになったばかりの状態と推測します。最近飲み込みが悪いなと感じておられるならば、一度ご相談ください。

食道炎

食道の炎症が原因で、食べ物が飲み込みにくくなることがある。逆流してくる例もあります。一定の年齢以上に達したら、少なくとも数年に一度は上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を受けていただくことを推奨します。おおうち耳鼻咽喉科では胃カメラはできませんが、ノドに嚥下を悪化させる所見がない場合は消化器内科を紹介させていただきます。

ノドが乾燥する

のどの乾燥が続くと、痛みや違和感を伴うことがあります。また、口腔の乾燥症は齲歯(むし歯)や歯周病、味覚障害の原因にもなりますし、咽喉頭の乾燥は痰が粘ってしまい慢性的な咳や嚥下困難の要因にもなり得ます。また、放射線治療の後は個人差があるものの全員が乾燥症になります。他にも、シェーグレン症候群などの膠原病が乾燥の原因だと判明するケースもあります。治る可能性のある乾燥なのか、時間とリハビリが必要なものか、あるいは治療法が現在確立されたものがないのか、様々なパターンがありますが、ノドの乾燥は長期化する例が多く非常に不快な症状なので、できるだけ早めに相談いただきたいです。

考えられる病気

ドライマウス(口腔乾燥症)

唾液分泌が減少し、喉が乾燥することがある。このドライマウスというのは病名ではなく症候名です。ドライマウスの原因になる疾患は複数存在しますが、ドライマウス状態=唾液腺の分泌力低下、という本質は一つです。唾液腺とは文字通り唾液を作っている腺です。耳下腺、顎下腺、舌下腺という大唾液腺と、口腔内に無数に存在する小唾液腺から成ります。例えば寝ている時に口を開けていたせいで朝起きたら口が乾燥している、これはうがいするなり水分摂るなりで速やかに改善すると思いますが、これは唾液腺が正常に機能している前提の話です。
加齢、喫煙、アルコール摂取、薬の副作用、糖尿病、腎機能障害、シェーグレン症候群などの膠原病といった身体変化・病気、あるいは放射線治療による唾液腺の破壊によって唾液分泌力が低下すると、乾いていても水を飲むだけでは解決しない、という状況に陥ります。ちなみに、唾液が出るときは唾液腺の周囲が動くことが必要です。耳下腺を例に挙げると、咬筋という大きな筋肉の収縮運動が耳下腺を刺激して唾液が口の中に放出されます。つまりもぐもぐという動きがあった方が唾液は沢山出るのです。ここでも耳鼻科のアンチエイジングが関わってきますが、『噛む力』が弱まってくると最終的にドライマウスに至る可能性がある、ということです。治せる、あるいは工夫することで少し前の状況までは戻せる、というフレイル状態であれば治療の見込みは十分あります。まずはなぜドライマウスになってしまっているかを知ることが必要です。ぜひ、ご相談ください。

シェーグレン病

免疫系が唾液腺や涙腺を攻撃する病気で、喉の乾燥が続くことがある。この疾患はいわゆる膠原病で、結合組織疾患ともリウマチ性疾患とも自己免疫疾患とも称されます。免疫が関わってきます。免疫というとわかりにくいかもしれませんが、私は「細菌やウイルスといった外敵に向かうはずの自分の兵隊が、自分の体を攻撃してしまっている病態」と説明するようにしています。関節リウマチやSLE、強皮症などと同じく、自己免疫疾患なのがシェーグレン病です。唾液腺や涙腺が長期間の経過を経て退縮してしまい、唾液や涙液の分泌力が廃絶してしまう疾患です。近年では、IgG4関連疾患とも深く関わっていることが示されております。まだまだ特効薬もなく、ステロイド剤や免疫抑制剤を用いることが一般的です。耳鼻咽喉科では治療まで担当することはほとんどなく、膠原病内科に相談するケースが多いです。

放射線性咽喉頭炎

頭頸部癌(非常に稀ですが癌以外でも)の治療で放射線治療を選択するケースは多いですが、ほぼ必発となる合併症がこの放射線性粘膜炎であり、平たくいうとこれはやけどです。がんを消すために放射線を照射しますが、この時に口の中や咽頭喉頭の粘膜がやけてしまいます。やけどは時間が経てば治りますが、この経過中に無数にある小唾液腺及び大唾液腺は再生するかわからないほどに損傷してしまっているため、唾液が出なくなり乾燥が起こってくるのです。放射線の治療中・終了後もこまめに含嗽し、失った唾液分泌力を戻すしか方法はありません。唾液分泌を促すものや、唾液の代わりになるような薬剤もありますので、いつでもご相談いただければと思います。出なくなって初めてわかるありがたみという表現を患者さんからお聞きしたことがあります。吐いて捨てるだけだったのにこんなにも出て欲しいと願うことになるとは、とおっしゃっておられました。薬剤の中には漢方薬を使う場合もあります。私は大学院の研究で漢方薬を精査していましたので、東洋医学も診療に活かせると考えています。なかなか万人に有効な治療薬はないのが現状ですが、一緒に取り組めたらと思っています。

いびきがひどい・寝ていると息が止まる

いびきがひどい・寝ていると息が止まる

いびきが大きい、睡眠中に呼吸が止まるといった症状は、睡眠の質を低下させるだけでなく、健康にも影響を及ぼします。小児では身体的あるいは学力的な成長にも大きな影響が出ますし、成人では肥満の原因や高血圧・不整脈などの心血管系異常の原因になるなど、世代を問わず問題になっているのが睡眠時無呼吸症候群です。本当は伸びるはずだった身長が伸びきらない、学校で落ち着きがないと指摘される、集中力がなく勉強ができないといった兆候や、場合によってはおねしょが治らないなども関係があるとされています。もちろん全てが無呼吸のせいとは限りませんが、少なくとも関連はあります。成人では、(他にも何か原因があったかもしれないが)無呼吸症候群が最大の原因で突然死した症例も報告されています。

イビキは大人だったら誰でも経験があるものですが、毎日はおかしいです。また、小児では何か原因があると考えてあげるべきです。耳鼻咽喉科、小児科、歯科口腔外科、循環器内科などが関わる疾患です。中でも診断がつけられて、かつ治療法も持っているのは我々耳鼻咽喉科です。ご自身でなくても構いません。一度ご相談ください。

かくいう院長自身もCPAP治療をしている患者です。治療するようになってから明らかに朝が強くなりました。なのでより親身になってお話が伺えると思います。

考えられる病気

睡眠時無呼吸症候群

睡眠中に呼吸が止まり、いびきがひどくなることがある。いびきを指摘される、日中に眠気が強い、昼寝ではなくいつの間にか眠ってしまっている、など様々な症状があります。小児や学生の場合、授業中の居眠りや落ち着きのなさといった症状から、学力低下あるいは身長の伸び悩みなど多彩です。受診いただいた際に問診と鼻腔・口腔咽頭の診察をさせていただきます。そこで検査すべきと判断した場合、まずはご自宅でもできる簡易無呼吸検査を行います。その数値を見て脳の疾患を疑うなど、より精密な検査が必要と考えられる場合は医療機関へ紹介させていただき、一泊入院で検査(full-PSG検査)を受けていただきます。

結果次第では手術の適応があったり、歯科で睡眠用の装具を作成したり、あるいはCPAP治療を行うことになったりと、治療法を決定していただくことになります。

なお、初めて受診なさる際に睡眠中の動画を持参していただくとよりわかりやすいですが、必須ではありませんので大丈夫です。現代病とも言える睡眠時無呼吸症候群ですが、放置すると高血圧や不整脈など循環器内科の疾患を併発することもあります。シンプルに「疲れが取れない・・・」というお悩みでも構いません。一度ご相談ください。

先述の通り院長自身もCPAP治療している身ですので、より一層共感できます。

扁桃肥大

口蓋扁桃や咽頭扁桃が大きくなることで、気道が狭くなり、いびきや呼吸停止が引き起こされることがある。小児では無呼吸の原因として最も多く、そして手術になるケースも扁桃肥大が理由として一番多いです。成人でも問題になることはもちろんあります。

小児で、かつ山口大学病院耳鼻咽喉科でしか受けられませんが、CITAという術式があります。成人・あるいは小児であっても無呼吸以外の扁桃肥大症例に施行する通常の扁桃摘出術よりも疼痛が少なく、また術後出血の可能性も非常に低い術式です。(ただし、山口大学病院耳鼻咽喉科での通常の扁桃摘出術における術後出血率は0.2%でした。これは2024年以前過去10年分の集計を私が取ったものですが、どの施設よりも低い水準です)
大学病院とも連携をとっていきますので、まずはご相談ください。

鼻中隔湾曲症

鼻の中隔が曲がることで、呼吸が妨げられ、いびきがひどくなることがある。これに関しては睡眠時無呼吸の原因となるケースは少ない方ですが、それでもやはり手術(鼻中隔矯正術)で改善できる無呼吸としては十分あり得ます。アレルギー性鼻炎を同時に発症している場合は、鼻中隔の矯正だけでは不足します。下鼻甲介形成術や後鼻神経切断術を併用する例もございます。近年は鼻の手術は基本的に全身麻酔で、1週間程度の入院が必要になる事がほとんどです。

当院では術後退院後の処置も担当いたします。また、自己洗浄の道具についてもご相談いただければ対応いたします。

なお、整容面での治療については当院では対応致しかねますのでご了承ください。

のどの腫れやしこりが気になる

のどにしこりや腫れを感じる場合、炎症によるものから腫瘍までさまざまな可能性があります。自己判断せず、専門医の診察を受けましょう。院長の専門分野です。クリニックでできる範囲の精密検査(超音波ガイド下細胞診検査、ファイバー下組織生検など)も行います。また、頭部から頸部までで限定的な範囲ですがCT撮影も可能です。

炎症による頸部腫脹では「先天的な腫瘍に生じた感染」と「後天的な要因」がありますが、概ね抗生剤投与にて軽快する事が見込めます。必要の際はご相談にはなりますが、当院で点滴の治療も可能です。ただし、頸部膿瘍が生じている場合あるいはそれが推定される場合は高次医療機関へご紹介させていただきます。また、後天的な要因で腫瘍が出現している場合は精密検査や何らかの治療が必要になるでしょう。当院である程度の調べをつけたのち、総合病院へ紹介させていただく事が多いかと思います。もちろん急ぐケースとそうではないケースとありますので、そこは話し合っていきましょう。

最もお伝えしたいことは、「しこりがあるとわかっていて受診しないことだけはダメ」です。

頭頸部の腫瘍にはわかりやすく痛みや飲み込みにくさなど、生活上はっきり症状を自覚するものと、触っても当たってもしこりとして触れるだけで何ともないものとがあり、恐ろしいのは後者であっても悪性の場合があることです。顔や首は他者からどうしても見えてしまい、「それどうしたの?」と指摘されやすいです。例えば手術の跡が入るのが嫌だなとか思いがちですが、放置すると際限なく大きくなる腫瘍もあり、「もっと早く受診しておけば良かった」となる例は非常に多いです。

痛くも痒くもない、かもしれませんが、まずは見せていただければと思います。

考えられる病気

前頸部の腫脹

顎の真ん中(オトガイ部分)から鎖骨と鎖骨の間(胸骨柄)までの「頸の正中線上」
男性で言えばのど仏の上下というと想像しやすいかもしれません。

①甲状腺腫瘍

のど仏の下に位置しており良性と悪性いずれも発生します。左右どちらかに偏るケースが多いですが、頸の真ん中が全体的に大きく腫れることも稀にあります。
甲状腺がんは無症状のことも非常に多く、またある程度の大きさにならないと(概ね20mm以上)腫脹として気づけません。診断には頸部エコー検査が有用です。
良性も含めると10代などかなり若年の方でも腫瘍は発生しえます。エコー検査は無痛なので積極的に受けていただきたいです。
甲状腺の腫瘍は良性でも悪性でも、治療法として手術を選択することがほとんどです。その場合最も注意すべき合併症は反回神経麻痺(声がかすれたり誤嚥してむせやすくなったりする)です。腫瘍サイズが小さいほど神経の保護はしやすいですので、そういった意味でも早期発見が望まれます。

②正中頸嚢胞(せいちゅうけいのうほう)

オトガイ部分からのど仏の間(のど仏の少し上の位置)に生じます。
先天的なものであり、整容面以外には基本的に悪影響はありません。胎生期に自然と消えるはずだった組織が遺残して、袋状に形成されたものになります。
正式には甲状舌管嚢胞といいます。
大きくなりすぎる・感染して痛みや発赤を生じる、などがあると治療対象となります。
治療は基本的には手術を選択することになります。
嚢胞が大きければ大きいほど手術の傷も大きくなりますので、要検討になると思います。

③転移性腫瘍

いずれかの臓器に発生した悪性腫瘍が頸部に転移してくることは決してあり得ないことではありません。私自身も腎臓がんの甲状腺転移や乳がんの前頸部リンパ節転移、大腸がんの甲状腺転移などを経験いたしました。
つまり「頸のしこりからカラダのどこかのがんが見つかることもある」ということを意味します。転移性腫瘍の場合は多くのケースで硬いしこりとして触れます。

頸部正中に生じる可能性のある腫瘍は他にもありますが、頻度が多いものを挙げました。
いずれもケースもまずはクリニックでの頸部超音波検査がスタートになりますので、気になるしこりを触れる方、この記事を読んで気になった方はぜひ診察させてください。

側頸部の腫脹

いわゆる「頸部」です。一言でくびと言っても実際私は以下のように細かく分けて考えます。場所によってある程度疾患が予想できるからです。

①首筋付近

あごを右下・左下にうつむかせた時、斜めに触れる筋肉が胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)で、一般的に首すじと呼ぶものです。
胸鎖乳突筋を目印に頸部の重要な血管やリンパが存在しています。

1)頸部リンパ節転移

首筋でしこりが触れる場合に見逃してはならないものが転移です。
中咽頭癌や下咽頭がん、喉頭癌、あるいは唾液腺がんや甲状腺がんからの転移を想定してカメラの検査などを追加していきます。
エコーを行いながら細胞を採取する細胞診検査が必須です。
下でも触れますが、食道がんの転移が生じることもあるため、頸部リンパ節転移が発覚したら上部消化管内視鏡(いわゆる胃カメラ)を受けていただく事が強く推奨されます

2)悪性リンパ腫

血液の病気ですが、側頸部に腫瘍が出現することがあります。別名「血液のがん」であり、適切な治療を行わないと生命の危機にもなりかねません。はじめは頸のしこりとして出てくる事もあるのです。クリニックでは確定診断に至ることが難しいケースもありますが、各医療機関へ紹介させていただきます。

3)良性の病変

側頸嚢胞やリンパ管腫など、柔らかい弾力のあるしこりとして触れます。時に分厚いものだと硬めに触れますが、基本的には感染していない限り痛みは自覚しません。
手術で摘出することもあれば、硬化療法を行うこともあります。
稀な腫瘍が生じることありますので、気になる方はぜひ一度見せてください。

4)頸部膿瘍

耳鼻科が取り扱う疾患の中でも緊急性が高い病態です。いろんな原因がありますが、その結果として首に膿瘍(膿のたまり)が形成されてしまったことを指します。
先程、首に起きた感染・炎症は抗生剤にて対応、と表記しましたが、頸部膿瘍に至ってしまった場合は手術が必要になります。

<様々な原因> 
a)扁桃周囲膿瘍からの進展
b)齲歯や抜歯後の感染からの進展
c)耳下腺や顎下腺膿瘍からの進展
※ これら以外にも原因はあり得ます

どれも注意が必要です。特にbは誰にでも起こり得ます。

頸部膿瘍は喉頭浮腫(呼吸をする場所が腫れる)を引き起こし、結果として呼吸困難・窒息に至る死亡事故に繋がります。
私自身、多くの頸部膿瘍切開排膿術を緊急で行ってきましたが、年齢性別は問いませんでした。気管切開が外せなくなったり、その後嚥下ができなくなったりなど、膿が治ればそれでおしまい、とはならない例もあります。
首が腫れて痛くなったらとにかく少しでも早く受診していただくことを強く推奨します。

②顎の下(オトガイではなく左右)

1)顎下腺の問題

顎下腺腫瘍や顎下腺唾石症、あるいはIgG4関連疾患(慢性硬化性唾液腺炎)などが該当します。顎下腺腫瘍は良性悪性いずれもありますが、悪性の場合は硬く、痛みを伴うケースが多いです。唾石症を含めて慢性炎症の場合も硬いしこりとして触れやすいので、がんと区別が難しいです。キーワードとなるのが「食事の前後で腫れたり引っこんだりするか」という点。この場合は唾石のことがほとんどです。また「左右どちらかなのか両顎なのか」という点ですが、片側性の場合は腫瘍や唾石、両側性の場合は慢性硬化性唾液腺炎と考えて支障はありません。

顎下腺腫瘍の治療も手術を選択することが多いですが、最も注意を要するのが「顔面神経下顎縁枝の麻痺」です。他にも「舌神経障害による舌の感覚異常」や「舌下神経損傷による舌の運動障害」などが挙げられます。

唾石の場合は根治を目指して顎下腺を摘出する方法と、とりあえず今ある石を除去するための口内法が選べます。前者は全身麻酔で頸部の皮膚切開が必要であり、上記の神経障害のリスクがあります。後者は首に切開を入れる必要はありませんが、やはり全身麻酔が必要です。口腔底の一部を切開して石を取り出す手術です。唯一、唾石が出口で詰まっている場合のみ、クリニックで局所麻酔にて取る事も可能ですが、難しいケースもあります。当院ではCT撮影ができますので、石がどの位置にあるのかを知ることが可能です。

慢性硬化性唾液腺炎はシェーグレン病(以前はシェーグレン症候群と呼称されていましたがシェーグレン病へと国際的に正式に名称変更されています)すなわち膠原病=自己免疫疾患が発見される場合があります。あるいは、IgG4関連疾患という疾患概念もあり、これらは細胞診断では確定できません。高次の医療機関にて組織生検(顎下腺の摘出など)を経て、かつ眼やその他膵臓などの内臓を検査して初めて確定します。
放置すべきではないので、疑った場合は紹介させていただきます。

2)上頸部リンパ節転移

頸部リンパ節転移の中でも顎の周りという、比較的上の位置へのリンパ節転移です。上咽頭癌や中咽頭癌、唾液腺癌を疑います。P16関連中咽頭癌や一部の甲状腺癌以外の悪性腫瘍では、リンパ節転移があるだけで病期=ステージが上がります。
痛くないから・マスクで隠れているからと言って受診を控えることがないようにお願いいたします。

3)扁桃腺の腫脹

顎が痛む、腫れているなどの症状で最も多いのは扁桃腺の腫れでしょう。この場合の扁桃腺は口蓋扁桃を意味します。口蓋扁桃は口蓋垂の高さから下顎骨の高さまで、意外に縦長の臓器なんです。風邪を引いて両顎の下が腫れて押したら痛い時は扁桃炎が考えられます。しかしなかなか腫れが引かない時、、、もしかしたら別の疾患かもしれません。扁桃炎でも扁桃腫瘍でも、耳鼻科はどちらも対応できます。

4)頸部膿瘍

顎の下が腫れて痛む場合は扁桃周囲膿瘍や歯性感染が原因であることがほとんどです。そして、この区別として歯科治療を受けていたかという点と「口が開くかどうか」が鍵になります。口が開かないときは扁桃周囲膿瘍からの進展が考えやすいです。
顎周りの腫れだけだと我慢できてしまうため、受診が遅れがちですが、放置すると下に下がってきて呼吸に影響が生じます。そうなる前に受診して頂けると嬉しいです。

5)その他稀なケース

③耳の周り

1)耳下腺良性腫瘍

多形腺腫やワルチン腫瘍が非常に多くを占めます。痛みがないため放置する例が多いですが、時に際限なく大きくなることや、悪性転化(がんに変わる)することも報告されています。
耳下腺腫瘍の治療は第一選択が手術ですが、この時に問題になるのが顔面神経麻痺です。小さい腫瘍を相手にする方が神経を傷つける可能性は低くなるので、手術を考える場合はできるだけ小さい段階で受診すべきです。
耳たぶの前方や下方にしこりが触れる際はぜひ早めにお越しください。

2)耳下腺悪性腫瘍

耳下腺がんは20種類以上のタイプがあり、その中には非常におとなしく手術で摘出してしまえば追加治療が必要ないものから予後不良で集学的治療を要するものまで多彩です。鍵となるのは「痛み」と「顔面の麻痺」そして「可動性不良」でしょうか。私の経験上、悪性腫瘍ではこのどれかが見られます。恐ろしいのは、痛くもないし麻痺もない、触ったらクルクル動くのに摘出したらガンだった、というケースがある事です。さらに、耳下腺がんで経験した最年少は手術当時小学生だったお子さんです。他にも高校生や20代でもありました。
耳下腺の異常はマスクをしていてもわかりやすいことがほとんどです。おかしいなと感じたらすぐにご相談ください。

3)感染性耳瘻孔

炎症の一つではありますが、のちに手術になる可能性があるものとして先天性耳瘻孔の感染があります。多くは小学生など子供の頃に感染を起こしますが、成人してから初めて判明する例もあります(最年長は還暦を過ぎておられた方でした)。耳ともみあげの間に小さな穴があって、ニキビのようにそこから角質などが排出される場合、それは先天性耳瘻孔です。指で触ると不潔です。その穴から細菌が入り込んで炎症を起こすことを感染性耳瘻孔と言います。
炎症が治ってから手術することが多いです。

4)その他の炎症など

耳下腺は顎下線と同様に唾液をつくる臓器(唾液腺)です。唾石が生じると食事のたびに腫れます。また、ムンプスウイルスの感染による流行性耳下腺炎(おたふく風邪)でも事前部が腫れます。おたふくで本当に怖いのは、これに起因する感音難聴や精巣炎及び卵巣炎です。おたふくにかかった人でこれらを起こす可能性は非常に低いですが、発生してしまった場合治りません。例えば難聴になってしまったら人工内耳にする必要がでたり、精巣炎・卵巣炎では生殖機能が喪失するケースもあり得ます。
ムンプスの抗ウイルス薬は存在しませんので、重症化しないように解熱や点滴による水分補給などの対症療法を行うことになります。
やはりワクチンは接種しておくことをお勧めします。

④鎖骨の上

1)リンパ節転移

頸部の中でも鎖骨上窩(鎖骨のところの窪み)はリンパ流が集まっている部位であり、様々なガンが転移します。
基本的に頭頸部のがんが多いですが、左鎖骨上窩の場合肺がんや胃がん、食道がんが転移してくることがありこれを「ウィルヒョウのリンパ節転移」と呼びます。頸部のしこりで身体のどこかにガンがあることが発見される代表例です。
頭頸部の場合は下咽頭癌や甲状腺がんの転移が多いです。鎖骨上へのリンパ節転移はがんのステージにおいても重要な手掛かりになり、治療や予後に大きく関連します。
鎖骨の上にしこりが触れたらすぐに受診してください。

2)リンパ管腫などの良性腫瘍

リンパ管腫の発生は老若男女問わず、そして基本的に柔らかくで痛みはありません。
しかし非常に大きくなるケースもあるため注意は必要です。
年少者の場合、成長に応じて目立たなくなることが多いので手術することはあまりありません。感染が生じるなどがあると問題になります。赤ちゃんでも処置を要する例を経験しましたので、侮れません。

他にも、甲状腺腫瘍で巨大なものは鎖骨上まで腫れるという例もあります。

頭頸部悪性腫瘍

頭頸部の悪性腫瘍はノドの中、そして首のいずれにも出現します。
つまり、ノドがおかしい・首にしこりができたいずれの場合でも頭頸部癌が隠れている可能性があるのです。何度でもお伝えしますが「おかしいと感じたときが受診のタイミング」です。

咽頭がん・喉頭がん
①上咽頭癌

鼻の奥、ノドで言えば上の方にあたります。発覚するのは頸部リンパ節転移がきっかけというほど、自覚症状が乏しく、転移が出る前に気づくことは難しいです。鼻炎などで鼻内をファイバー検査したに偶然発見することはあり得ます。あるいは、大人になってからの中耳炎は珍しいですが、上咽頭ガンによって耳管咽頭孔が閉鎖している時には生じますので、中耳炎をきっかけに発覚する事もあります。成人なのにそれまで経験もしたことのない中耳炎になった場合は必ず上咽頭を確認しましょう。

EBウィルスの感染が多く報告されていますが、それ以外の原因もあります。

治療はステージによってガイドラインがありますが、基本的には放射線治療と抗がん剤を併用する放射線化学療法を中心にプランが組まれます。患者さんご自身の生活も含めて考えていく必要があります。

放射線治療後は滲出性中耳炎が生じたり、味覚障害や口腔乾燥症が生じたりなど様々な後遺障害が予想されます。そしてこれらは得てして長期化します。
高次医療機関で治療を受けられた後、当院でも後遺障害を和らげるためお手伝いできることがあると思います。

②中咽頭癌

1)p16関連中咽頭癌

中咽頭癌はHPV関連とそうでないもの、そして混在している場合があります。この中でp16関連ガンは比較的治療への反応が良く、予後も良好なケースが多いです。これによってステージ分けをわざわざ分けるに至ったほどに、非関連がんと比べて予後が違います。とはいえ、治りやすいと簡単に言えるわけではありません。
手術か放射線が治療の軸になりますが、いずれを推奨するかは医療機関によると思いますし、患者さんの病態にもよります。ステージが低いが頸部大血管との位置関係によっては手術を推奨できない、舌の運動が制限される可能性があるので放射線の方が適切だ、という例もあります。
どの治療を受けられても、その後全く後遺症がないという方が少ないと思いますので、当院でもお手伝いできることがあればと思います。

2)p16非関連中咽頭癌

HPV関連ではないもの、すなわち飲酒や喫煙が主たる要因の場合は治療への反応が良くない傾向があり、予後が悪いことが多いです。
p16-だった場合はより集学的にしっかりとした強度の治療が必要になります。ということはそれだけ後遺障害も強く生じるリスクがあります。

<中咽頭の亜部位>
中咽頭と言ってもいくつかの部位があります

・側壁;いわゆる口蓋扁桃とその周囲が側壁です。手術は比較的行いやすいです。
・前壁;いわゆる舌根部や喉頭蓋谷と言った場所で、ノドの真ん中です。手術は困難
なことが多く、喉頭全摘出も一緒に行う例があります。
・後壁;口を開けた時に突き当たりで見えているのが後壁です。手術はしやすいです。
・上壁;軟口蓋の位置です。手術すると鼻咽腔逆流が問題になりやすいです。

③下咽頭癌

1)飲酒喫煙がある場合

口腔がんや食道がんなどの合併が懸念されます。
下咽頭癌は多くの場合で「飲み込みにくい」ことや「むせるようになった」、「声がおかしくなった」などの症状がきっかけで受診されます。
下咽頭は喉頭との分岐点であり、進行している場合一緒に摘出する必要が多いです。つまり、ノド(咽頭)の手術なのに声(喉頭)を失ってしまう、ということになります。上記のきっかけの前には、「ノドがしみる」「違和感がある」などの軽微な症状に気づくかもしれません。飲酒が習慣になっている方や喫煙者は咽頭の知覚が低下しますのでこれに気づきにくいです。また、健康診断では胃カメラで食道を観察するのに咽頭はスルーされがちです。受診した時には喉を失うしかない状態だった、とならないためにも早期発見が望まれます。

治療は早期であれば経口的切除、いわゆるカメラ手術が可能です。ステージのT分類が1−2であればカメラ手術、放射線治療いずれも積極的にお勧めできます。一方でT3以上であれば経口切除は残存のリスクが大きくなりますのでお勧めしかねます。
大きく切除するあるいは放射線治療を選択することになると思います。
切除についても、喉頭を温存しながらできるものは多くはなく、喉頭合併切除になることを覚悟するケースが多いと思います。
それもあって初めに放射線治療を希望される方は多いですが、放射線治療後に万が一再発が生じた場合は合併症が多くなることは十分留意しておくべきです。
治療前から最初のことなんて考えたくないのは当然のことではありますが、がんの治療では必ず頭のどこかで考えておかなければならないことだと思います。

手術で喉頭も全摘出した場合は代用音声(代替音声)が推奨されます。これに関しては喉頭がんの項目に記載いたします。
下咽頭癌の治療後に一番問題になるのが「食事」です。

手術した後にリハビリを経て通常食を問題なく食べられる方もおられますが、柔らかいもの・細かく刻んであるもの・とろみがついているものなど、一手間ふた手間かかるケースは非常に多いです。
放射線治療後であれば尚更です。そして年齢的なものも関連しますが、誤嚥による肺炎が問題になるケースはあります。放射線でがんは退治できたものの満足に食べられない、肺炎を繰り返してしまうというのは決して少なくありません。

食事すなわち栄養の管理は本当に大事です。ただでさえ治療によって体重が減ってしまうことが多い上に、治療後も食事が取れずさらに痩せてしまうと、日々の生活も心配ですがそれ以上に再発のリスクもあがります。すなわち、腸管免疫が低下してしまうと、身体全体の抵抗力が落ちてしまうためです。

当院では、早期発見に努めるだけでなく、大きな治療を受けられた後のフォローアップもお手伝いできればと考えております。また、将来的にはがん治療患者さんの訪問診療も行っていく予定です。大きな病院では伝えにくい困りごとなどご相談いただければと思います。大学病院の専門外来を担当していた時には、診察室では言われなかったが後で看護師さんに追加相談なさっていたという経験がありました。時間が限られている中で気を遣われたのかもしれません。これからはそういった声にも耳を傾けていければと考えております。

全てに共通しますが、やはり早期発見に勝る治療はないと言えます。
治療後の再発発見についても同じことが言えます。
健康診断以外でも何かおかしいなとノドの異変を感じられたら受診をお願いしたいですし、40代以降は上部消化管内視鏡を積極的に受けられることをお勧めします。

2)飲酒喫煙がない場合

何も悪いことはしていないのに・・というのがこのパターンです。数は多くはありませんが、こう言ったリスク因子がない方でも下咽頭癌が生じることがあります。
代表的なのは鉄欠乏性貧血によってプランマービンソン症候群が引き起こされ、輪状後部に下咽頭癌を生じる例です。一般的に性周期の関連から男性よりも女性に多いとされ、私自身の経験でも全員女性でした。
治療は上記と同じになります。つまり、若い頃から貧血で、という方が将来下咽頭癌になってしまったがゆえに声を失うことになった、ということが起こり得ます。

若いのに貧血で、という問題がある場合は、血液内科やあるいは女性であれば婦人科などに相談していただき、放置しないようにしてください。

④喉頭癌

1)声門がん

喉頭がんといえば声門癌が想起されると思いますが、実際にこれが最も多いので間違いではありません。声のかすれの項目でも記載しましたが、他の癌と比べて発見しやすい(声が掠れたというわかりやすい症状が出るため)がんではあります。
ステージが低いうちは放射線治療で完治が見込めますが、進行がんの場合は喉頭全摘出が必要になるため、声を失ってしまいます。
声のかすれ(嗄声;させい)が出た場合、風邪だろうと自己判断せず、長引くようであれば当院にお越しください。

2)声門上がん

がんが声門の上に生じた場合、声の変化が起こりにくいので発見が遅くなりがちです。声は変わっていないが咳が増えた、ノドの違和感など、小さな変化が出ることがあるので見逃さないようにしたいです。
声門上がんは声門癌と比べてリンパ節転移が多いです。治療も大きなものになりがちですので注意が必要です。
喉頭を全摘出して尚且つ両頸部のリンパ節郭清も必要、となると手術時間は概ね6時間から7時間程度になります。かなり体への負担も大きくなりますのでここに至る前に発見することが望ましいです。

3)声門下がん

声門の下に生じた場合も声の変化が出にくいですが、咳が多くなりやすいです。ノドの詰まった感じも訴えられる方が多いように感じます。
声門下がんも転移が多い印象を受けています。
やはり喉頭全摘出が選択肢に上がりますので、治療が大きくなりやすいです。

口腔がん
①舌がん

口腔がんの中で最も有名で最も多いです。できる場所によって違いがあります。
これは一般事項ではなくあくまで個人の経験則ですが、再発や転移が多く治療が一筋縄ではいかないことが多いです。

基本的には手術がメインの治療法です。放射線治療には小線源療法などもありますが、山口県では一般的ではありません。
手術の結果、放射線や抗がん剤などの化学療法を追加することも多い病気です。
咽頭がんと同じく、食道がんの合併も多く見られますので、胃カメラを受けていただきたいです。

1)舌縁部

左右の縁にできる舌癌で、口腔がんでは最多です。
しょっちゅう噛んでしまう、入れ歯が合っていなくていつも舌縁に当たる、口内炎がいつも同じ場所にできるなど、慢性的な機械刺激が原因となることが多いです。
ステージが低いうちは舌の部分切除のみで対処可能ですが、進行するにつれて舌をどこまで切除しなければならないかが変わります。

2)舌体部

舌の真ん中にできる場合です。真ん中をくり抜くことは難しいので、舌全摘出になる可能性があります。

3)舌根部

中咽頭前壁とも言える部位です。そこでも触れたように、喉頭全摘出を要するケースが多いです。

どの部位に生じたとしても、舌は取りっぱなしにはできません。欠損部位は再建する必要があります。
半分切除程度であれば前外側大腿皮弁や前腕皮弁による再建が一般的です。
全摘出した場合は腹直筋皮弁や広背筋皮弁を用います。舌が全く置き換わってしまうと食事や構音機能が非常に悪くなります。リハビリ次第である程度再獲得することは可能ですが、元通りにはなりません。

②その他のがん

舌と歯肉の間にある柔らかい部分の口腔底がんや、下顎歯肉がん、頬粘膜がんなどがあります。手術・放射線療法いずれも行われますが、口腔外科領域でもあるためさまざまな診療科で治療にあたることが多いです。

甲状腺がん

様々な種類がありますが、頻度が多いものを列挙します。

①乳頭がん

甲状腺がんの種類の中で最多であり、基本的には進行が穏やかなタイプが多いです。しかし進行すると肺転移や骨転移、脳転移もよく見られますので注意が必要です。
手術に取って代わるほどの有効性がある抗がん剤はないのが現状で、ほとんどの症例で手術を選択することになるでしょう。
また、乳頭癌は発見時年齢55歳を境に予後が大きく変わるため、55歳になる前に頸部エコーを受けていただければと思います。

全摘出に至る場合、その後ヨード治療をおこなうことになろうかと思います。その後は甲状腺ホルモン剤とカルシウム剤・ビタミンDの薬を生涯服用する必要が出ます。

乳頭癌は進行が穏やかな面がありますが、一方で再発や転移が生じるのも忘れた頃にやってくる例があります。一般的にがんは治療後5年を目安に通院すると思いますが、この性格があるため甲状腺がんは10年通院した方が良いという意見があり、私も同意します。

内服のこともあり、長期間の通院が必要のため、当院をぜひご利用いただければ幸せです。

②濾胞がん

乳頭癌と同様、どちらかといえばおとなしいがんです。
ステージ評価も乳頭癌と同じく55歳で分けています。

③髄様がん

甲状腺に限局している場合は予後良好ですが、リンパ節転移や遠隔転移がある場合はあまり良くないです。
また、遺伝性のものがありますので、家族を調べるケースがあります。

④未分化がん

非常に予後が厳しいタイプです。手術ができれば行いますが、術後早期に肺転移が出たりなど、進行が早いことが特徴です。
ただ個人的な経験ですが、手術以外の治療で長期に小康状態を保てている患者さんもおられます。甲状腺がんに対する新たな治療薬剤がここ数年で多く発表されていることもあり、遺伝子解析も進んでいます。

甲状腺の異常発見や治療後のフォローアップは頸部超音波検査が最も重要です。当院では頭頸部がん専門医の経験を活かして細かなフォローをしていきます。どうぞご相談いただけますと幸せます。

唾液腺がん

唾液を作る臓器としては耳下腺・顎下腺・舌下腺という大唾液腺と、口腔内に無数に存在する小唾液腺があります。一概にはいえませんが、耳下腺よりも顎下腺、顎下腺よりも小唾液腺に生じるがんの方が悪性度が高い傾向にあります。また、唾液腺は咽頭や喉頭よりも構成する細胞の種類が多いため、がんの種類も20種類以上と非常に多いです。このため、治療は手術が基本となりますが、それが選択できない時確立された治療法が乏しいことが問題です。
口腔内や顎の下、耳の前や耳たぶの下方にしこりが触れたらすぐに受診をお願いします。
誤解のないように伝えたいですが、唾液腺腫瘍のほとんどは良性です。腫瘍であることを知りたくないので受診控えするケースが多いですが、怖くないことが多いのでぜひ超音波検査を受けていただきたいです。
また、悪性を疑う根拠は「しこりのせいで痛みが出てきた」「触っても全然動かず周囲にくっついているようだ」「顔面の麻痺」の3点です。これらがあるときは必ず受診してください。

①耳下腺がん

唾液腺腫瘍の大半は耳下腺にできます。
そのうちの5−10%程度が悪性腫瘍の可能性があります。多種多様ながんが生じますが、その中には唾液腺導管癌のようにかなり悪性度の高いものから低悪性度のものまで様々です。私個人の経験でもそうですが、小学生から大人まで幅広く発生します。
子供だから、若いからといってがんができないわけではありません。
耳下腺はお顔の表情筋を動かす顔面神経と重なる位置に存在します。がんが発生した場合神経浸潤を起こすと表情筋が麻痺してその部分の顔が動かなくなります(例;下口唇が歪む、片目だけ閉眼できない)。
手術を行う場合も、この神経が温存できるかどうかが非常に重要です。やはり腫瘍が小さいうちに摘出する方が神経障害を生じにくいですので、早期発見が望まれます。

②顎下腺がん

唾石の項目でもお示ししましたが、顎下腺の手術では顔面神経の中でも下顎緣枝(下唇付近を動かす神経)との関わりが深く、また他にも舌神経(舌の感覚)や舌下神経(舌の動き)とも関わります。
がんが生じた場合、耳下腺よりも悪性の程度が高いケースが多い印象です。はじめから固く動かないということは少ないと思いますので、やはり早期受診をお願いしたいです。

③舌下腺がんや小唾液腺がん

舌下腺は舌の下面にある小さな唾液腺ですが、悪性腫瘍が生じることはあります。耳下腺や顎下腺と異なり表面に出にくい(口腔底が柔らかいので目立ちにくい)ため、気付きにくいのが難点です。また、口腔底腫瘍なのか顎下腺腫瘍なのか舌下腺腫瘍なのか非常に見分けにくいです。小唾液腺がんもそうですが、悪性度が高いケースが多いとされています。

鼻副鼻腔がん

実は鼻の中にもがんはできます。また、鼻腔乳頭種という良性腫瘍が悪性転化することもありますし、鼻内に悪性リンパ腫が出現することもあります。鼻ないに腫瘍が生じていることは初期のうちはほぼ気づけないです。よって鼻腔がんであれば鼻詰まりや鼻出血で、上顎がんであれば頬の腫脹で、あるいは頸部リンパ節転移が生じて初めて自覚する例が非常に多いです。
鼻にがんができるなんてと思われるかもしれませんが、ありえます。
小さいものであれば内視鏡手術の適応もありえますが、進行した状態で見つかると眼球摘出の可能性も出てきます。また、これも想像しにくいかもしれないですが、鼻腔腫瘍が増大してしまうと髄膜炎や頭蓋内播種の危険性が出てきます。

ここまで述べてきたように、耳鼻咽喉科の取り扱う悪性腫瘍は非常に多彩であり、かつ日常生活に深く関わりのある障害が生じることが、直感的に想像しやすいと思います。
治療によって失うものが大きいため、何度も繰り返しになり恐縮ですが、少しでも早く発見できることが最も望まれることだと思います。

ノド・くびのお悩みは「おおうち耳鼻咽喉科」まで

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のどの痛み、違和感、声のかすれなどの症状があると、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。長引く症状や気になる異変がある場合は、放置せずに受診しましょう。

山口市の「おおうち耳鼻咽喉科」では、のどに関するさまざまな症状に対応し、適切な診断と治療を行っています。お困りの際は、お気軽にご相談ください。

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